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ふぇいく ぼーいふれんど? ぶらざー?

氷柱SS
2009年06月26日(金)「最後の手段」
からのifルートなお話です。

(始)
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「どうかしたの?」

 そう、最近の私はどうかしてる。
 憎たらしいはずのアイツが声をかけてくれることを期待して、
 いくらヒカル姉さまに頼んで失敗したからといって、
 アイツに偽装デートの代役を頼んじゃうなんて

 本当は最後の手段なんかじゃない。
 ヒカル姉さまにもう一度本気で頭を下げてもいい、
 あの人に弱みを握られるのは怖くてイヤだけど、
 霙姉さまに頼むという手段だってあったはず。

 なのにアイツがあんなに素直に頷くから――
 本当に――最近の私はどうかしてる――


「なぁ、ちょっと教えてくれないか、氷柱?」
 そう下僕が尋ねてきたのは土曜日の昼下がり。
 どうしてもオシャレなファッションが決まらないって言うの。
 やっぱり下僕だわ、自分の格好も自分で決められないのね、
 下僕への評価をまた一つ下げようとしたところで良い考えがひらめく。
 下僕のわけのわからないファッションで来られるぐらいなら、
 私が最初から見立てちゃった方がずっと簡単じゃない!
 だから私はこう言ってやった。

「しょうがないわね!情けない下僕のために
 ご主人様が一肌脱いであげるわ!」

 それから私は下僕の格好から行動から
 私にふさわしいように整えることに決めた。
 これもご主人様のツトメってやつよね。
 それで下僕が少しは見れるようになるんだから、
 下僕は地面に頭を擦り付けて感謝するべきなのよ。

「氷柱?このパンツきつくないか?シャツも結構きついし」
「きついじゃなくてスキニーって言うのよ!
 アナタも体型は悪くないんだからそれを見せていかなくちゃ!」

「ほら、背筋のばす!その方が背が高く見えるわ!」
「こう?」
「アゴ出したらダメ!しまりの無い顔に見える!」
「こう?」
「そう、悪くないわね。じゃ、笑ってみて?」
「こう?」
「……気持ち悪い」

「氷柱の誕生日は3/14。初めて出会ったのが一昨日のクリスマスイブ 
 だから出会って一年と半年記念日は済み、次以降は8/24、9/24と続き
 ……ってこれなんだ?知ってることをいまさら?しかも記念日って何??」
「いいから黙って覚えておきなさい!」

 そして下僕はそれなり、そう、それなりに、
 私の隣を歩いていても最低限恥ずかしくない程度に見れるようになっていた。

 ふうと一息、のどの渇きを感じた私はお茶を飲みに行くことにした。
 ついでに下僕の分も持ってきてあげようと思う。
 下僕にしては頑張っているんだから、
 たまにはご褒美をあげたっていいじゃない。

 そう考えながらキッチンに移動すると、そこには春風姉さまがいた。

「あら、氷柱ちゃん。勉強頑張ってたのね。何の御用?」
「ま、まあそんなところ、ちょっと飲み物を探しにきたの」
「あら、なら春風が用意しますね。いい紅茶の葉っぱがあったんです」
「いいわよ。それくらい自分でするから」
「氷柱ちゃんったら部屋に四時間もこもりっぱなしで頑張ってるんですもの、
 お姉ちゃんとしてはこれぐらい当たり前です♥」
「え、春風姉さま、今、なんて?」
「はい?氷柱ちゃんは四時間も勉強してました、って」

 時計を見ると五時を回っていた。
 こんなに長い時間――

 私が考え込んでいた間に春風姉さまはお茶の支度を終えていた。
 ティーポットとカップとミルク、そして琥珀色の液体が入った小瓶。

「ブランデーミルクティーです。疲れが取れますよ♥
 夕食ももうそろそろですから、お菓子を食べ過ぎないようにしてくださいね」

 そう言って立ち去る春風姉さまの姿に少し胸が痛む。
 下僕の分のカップを用意して部屋に戻ることにする。

 胸の痛みは勉強をしていないことだけじゃない。
 下僕は、私に付き合ってくれている。私の不用意な一言のために、
 これほどの時間を費やして――
 
 部屋に帰って飲んだ紅茶はとても美味しかった。
 普段ならストレートにするところだけど今日はミルクティー。
 ミルクの柔らかい味わいが今は少しだけ恋しかった。

 下僕が紅茶を飲む私に声をかける。

「なあ、氷柱……」
「何よ。人にモノを聞くときははっきり言いなさいよ。さっきも教えたでしょ。
 アナタの優柔不断な口調は直したほうが良いって」
「じゃあ聞くよ。何で俺を誘ったんだ?あんなに色々教えて」
「単に映画で」
「映画になんでそんなものがいるんだ?おかしいだろ?
 ここまで付き合ったんだ最後まで付き合うさ。だから事情ぐらいは教えてくれよ」

 下僕って時々ズルイ。
 普段はへらへら幸せそうな顔して笑ってるくせに、
 こんな時だけ真剣な顔して、しかも律儀に私の教えた通りきちんとした姿勢で、
 どうしてこのタイミングで聞いてくるの?
 たぶん私は我慢できない。意識してしまった胸の痛みが許さない。
 でも下僕にそんな弱みを見せることもできない――

 戸惑う視線にブランデーの小瓶が入った。
 下僕が少し紅茶に入れていたけど、まだ残っている。
 私はびんを手に取り一気にあおる。のどの奥が焼けるように熱い。

「おい、氷柱!」
「いい、私は間違えてお酒を飲んで酔っ払っちゃったの!
 だから今から何を話してもこれは酔っ払いのタワゴト!忘れなさい!」 
 
 私は語った。
 クラスメイトが誰と誰が付き合ったという話をしていたということ、
 黙っていたら「氷柱ちゃんは勉強でどうせ関係ないよね」と言い方をされたこと、
 その言い方に腹が立って彼氏ぐらいいると言ってしまったということ、
 日曜日にデートしているのをを見せるという約束をしたこと、
 今思うとお酒も効いていたのかもしれない。
 勢いに任せて全部下僕の前にぶちまけた。

 聞き終えた下僕は深く息を吐くとこう言った。
「なあ、氷柱わかってるとは思うけど正直に話したほうが良いんじゃないかな」
「……何がわかるのよ。あなたは黙って明日付き合ってくれればいいのよ」
 そんな下僕の言葉は聴きたくなかった。私の胸の奥で何かがうずく。

「いや、だって今が良くてもそうそうだまし続けられないよ。
 クラスメイトにウソをつくのはその相手に良く思って欲しいってことだろ?
 なら本当のことを伝えるべきだよ。周囲と上手くやりたいと思うなら――」
 何と言われれば満足できたのかわからない。
 だけどウソといわれた瞬間――私の中で何かが弾けた。

「あなたに……アナタなんかに!私の何がわかるのよ!
 あなたに言われたようなこと、私がどれだけ考えたと思ってるの!
 でもウソなんかつけないのよ!ウソにさせないでよ!
 私はどんな時も凄くなきゃダメなの!クラスメイトの前でも!誰の前でも!
 そんな私にならなきゃ、きっと誰も守れない!
 家族だって、ユキのことだって――」
「いや、違う。そういうことじゃ――」
「もういい、出て行って!お説教なんて聞きたくない!
 下僕は明日映画とその後少しだけ付き合えばいいのよ!
 それで今回のことは全部終わりなんだから!」

 感情の赴くまま、無理矢理下僕を部屋の外に出し、扉を勢い良く閉める。
 バタンと響いた扉の向こう、迷うような足音がしばらく響き静かになった。
「下僕のくせに……なんで黙ってつきあってくれないのよ……」
 ミルクティーを飲もうとして、紅茶が冷め切っていたことに気付く。
 私は――きっと最低なんだろうと思う。
 
 
 翌日、私は待ち合わせ場所の駅の広場に向かっていた。
 下僕は間違いなく来ない。確認する気にもなれなかった。
 やってくるクラスメイトにドタキャンされたと伝えるだけ、
「ねえねえ一人、遊びに行かない? キミを見たときから俺は――」
 やかましいバカな男たち、結局下僕もこいつらと一緒。
 クラスメイトがくるまでの我慢と思い携帯電話に視線を移す。
「ほらキミを見た時から俺の愛の炎はボーボー、ほら火もついちゃった」
 陳腐な手品でタバコに火をつけた男は目の前で騒音を撒き散らす。
 近くにもよらないで、臭いタバコの匂いがつくじゃない
 いつもの私なら聞き流せるのに今日は変にムシャクシャする。
 警察でも呼んでやろうかしら、イライラする自分が止められない。
 そう考えていた時、辺りが急に静かになった。
 瞳を上げた先に、下僕がいた。

「ごめん、待たせちゃったな。氷柱」

 来ないはずのものが来たから?
 ウルサイ騒音を止めてくれたから?
 待ち合わせたアナタの格好が似合っていたから?
 この時の気持ちは今でも良くわからない。
 それでも私はアイツの手を取ってこう言っていた。

「そんなことはいいから早く行きましょ」


 それからは予定通りのコースを下僕と巡った。
 映画館からアイスクリームバー、でも水着選びは中止。
 下僕なんかに私の玉の肌を見せるなんてもったいないわ。
 まあそれだけでなんてことのない普通の流れ、
 普通に映画を見て、アイスクリームを食べただけ。

映画前:
「車がロボットに変形するなんて子供だましじゃない?」
「しっ、そのフィクションのために大人の本気の技術が使われてるんだ。
 動きだけでも面白いと思うから、細かいことは考えずに気楽に楽しめばいいよ」

映画後:
「思ったよりは楽しめたわ。でも下品でうちの小さな子には見せられないわね」
「じゃあ、次回作が公開された時はまた一緒に見に行こうか、氷柱?」
「――、今回は券が余っていたからアナタを誘ってあげただけよ!
 あなたと一緒の映画で私がお金を出すなんてありえないんだから」

アイスクリームバー:
「どんな風に食べればいいんだ、コレ?」
「ああ、もうしょうがないわね。世話がやけるんだから、
 このスポイトで好きなリキュールをかけて好みの味を楽しむのよ」
「へー、面白いな。氷柱の方の味も試してみていいか」
「……またそんなことばっかり、やっぱり最低!そんな間接――」
「え?氷柱のスポイト借りるぞ?」(ポタポタ
「あ、ああ、その――、普通はそうよね――」


「ほら氷柱の分のジュース」
「ありがと」
 一通りのコースを終えた私たちは公園で一休みすることにした。
 下僕の買ってきたジュースを一口飲むと気分が少し落ち着く。
 今日の偽装デート、下僕にしては上手くこなしてくれたと思う。
 今も常に周囲を気にしていた私のため、休みを取ろうとしてくれている。
 これで私は私であることを崩さぬまま、普段の生活に戻れるし、
 少しぐらいなら――お礼を言ってもいいと思う。

「ね、ねぇ――」
「何?」

 私が意を決して声をかけた時、
 こっそりこのデートを見ているはずのクラスメイト達が近づいてきた。
「ねえ!氷柱ちゃん!彼氏を紹介してよ!」

 クラスメイト達は興味を抑えられくなったのか、最初からそのつもりだったのか、
 見ているだけという約束を破って、下僕の周りに群がった。
 文句を言いたいけど「なんで都合が悪いの?」と聞かれたら答えられない。
 もうダメだと思った。下僕は正直に全てを話してしまう――

「氷柱ちゃんとはいつからの付き合いなんですか?」
「知り合ったのは、おととしのクリスマスかな?もう一年半にもなるよ」
「氷柱ちゃんのことどんな風に呼ぶんですか?」
「いや普通に氷柱って呼ぶよ」
「キャー!呼び捨て!それじゃですね――」

 私は驚きを隠せなかった。
 下僕はウソにならないレベルで、
 でも彼氏でもおかしくないような形で、
 クラスメイト達の質問に答えてくれている。
 私があんな風に言ったから?下僕は私のために――

「あー氷柱ちゃんったら幸せなんだから!最後に一つ聞いていいですか?」
「うん、何でもいいよ」
「氷柱ちゃんのどんなところが好きなんですか?」

 もうダメ――
 今度こそ間違いない。下僕は私のことなんか好きじゃない。
 彼氏役を無理やり押し付けて、昨日あんなに怒鳴りつけて、
 前もって答えも用意してないし、答えられるはずがない――

 下僕は深く一つ深呼吸、口を開いた。
 その時の気持ちは今も忘れられない――

「氷柱はいつも一生懸命なんだ。
 誰に言われたからじゃない、自分のため、自分の大事な家族のために、
 勉強も、運動も、何でも、完璧を目指そうとしてる。自分を高めようとしてる。
 不器用すぎてつんつん尖ってしまう時もあるけど、優しい気持ちを持ってる。
 ――俺はそんな氷柱が大好きなんだ。
 クラスメイトのみんなの前では見栄をはったり、
 時に自分勝手に見えるときだってあるかもしれない。
 だけど氷柱は心の奥でみんなのことを思ってる。そんな女の子なんだ。
 どうか氷柱とこれからも仲良くしてやって欲しい。俺からみんなにお願いするよ」

 そう言ってアイツは頭を下げた。

 ――バカ
 ――本当のバカよ、あなたは。
 ――こんな私のために何を言ってるのよ。
 ――こんな私のことをわかった気になってるのよ。
 ――こんな私のことが大好きだなんて何言ってるのよ

 なのに私の中からこぼれた言葉はそのどれとも違っていて、

「お兄ちゃん――」

 私の言葉にクラスメイト達がざわめいた。 
「お兄ちゃん!?」「え、え、これって、どういうこと?」

 ミスしちゃった、と少しだけ思う。
 だけど全然くやしくない。妙に誇らしくさえ感じられる。
 アイツのあのバカな姿を思えば、今から私がする行動だって
 ――きっと恥ずかしくない
 
「私が、お兄ちゃんに彼氏のフリをするようお願いしたの。
 みんなを騙すつもりはなかったわ。ただ勉強だけの人間だと思われたくなくて、
 ――本当にごめんなさい」

 クラスメイトの前で頭を下げると、
 クラスメイト達はあっさり引き上げていった。
 私はすっきりとした気分で、アイツの方に向き直る。
 アイツが少し戸惑った表情で私を見るのが少し楽しい。

「いいのか氷柱?」
「いいのよ。そんなことよりほら、早く行きましょ」
「どこへ?」
「まったくあなたは本当にバカね。
 家に帰るまでが――デートでしょ?」

 そうして握るアイツの手のぬくもりは――
 今まで以上に心地よかったのを覚えている――


 翌日の学校
「ねー、ねー、昨日のデートすごかったね」
「彼氏じゃなくてお兄ちゃんなのはびっくりしたよ」
「でもあんな素直で可愛い氷柱ちゃんが見れたんだもの満足だよねー」
 
「…………」(カリカリ

「でもさ。あのお兄ちゃんちょっと素敵じゃなかった?」
「そうそう私も思った。氷柱ちゃんのためにあんなに一生懸命でさ」
「ファッションもカッコよかったし、氷柱ちゃんを普段から包容力で
 包み込んでいるのよ。あ~ん、私も包まれたい!」

「…………………」(カリカリカリカリガリガリ

「ねえねえ、氷柱ちゃん。あのお兄ちゃん紹介してよ!」
「お兄ちゃんなら別にいいよね?」 
  
「―――――――!」(ボキリ
 
「何言ってるのよ!私があんなやつを紹介するわけがないでしょ!
 アイツは、アイツなんか、私の――――下僕なんだから!」 

(終)

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akio(あきお)

Author:akio(あきお)
とってもゆるい人間が気まぐれに記事を書いたり、書かなかったりします。見てくれる方はあまりいないでしょうが、見て頂けるのでしたらありがたい限りです。
小説っぽいものを出したり、出さなかったりするサークル「妄想ワンコインスタンド」のほったて窓口。メールは aki44013あっとまーくgmail.com まで。twitterはdm_akioまで

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