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天使家新春かるた大会!!

下の日記をイメージしたSSです。
かなり長いです。

A HAPPY NEW YEAR 2012 ③

一応、下の私が以前書いたSSの続編的な位置づけです。
めんどい人はウチの長男は観月と百人一首やって負けましたぐらいの認識で問題ないです。

さしもしらじな



「かるたとりでもするか」

 一月三日の昼下がり。
 正月番組の繰り返しにも皆が退屈し始めた頃、
 リビングに入ってきた霙姉さんが突然そんなことを言いだした。 
「ヤルヤルー☆」
「小雨も、やってみたいです」
 その声に真っ先に飛びついたのは最初からリビングにいた立夏と小雨だ。
 テレビを見ていた立夏はソファーの上から身をのりだし手をブンブンと振る。
 本を読んでいた小雨は立夏の隣で控えめに手を小さく上げた。

「オマエはどうだ?」
 コタツでみかんを食べているこちらに霙姉さんが声をかけてきた。
「やらない」
「つまらんな。観月に百人一首で負けたのがそれほどショックだったのか?」
「き、今日はチビ達の遊び相手で疲れたので今回は観戦させていただきます!」
 途端に立夏から不満の声が上がった。
「えー、オニーチャンやらないのー?」
「立夏ちゃん、お兄ちゃんも疲れてるから無理を言うのは……」
「ごめん、二人とも。今回参加はしないけど、その分二人を応援するからさ!」
「もー、オニーチャンと一緒に遊べないのはザンネンだけど、かわりにリカのことちゃんと見ててネ☆」
「はい、……小雨がんばります!」
 
 二人に断りを入れながら、元旦のことを思い出す。
 多少は自信があったはずの百人一首で、歌を全て覚えていた観月に完敗したのだ。
 たしかに勝負はボロ負けだったけど、それがショックで勝負を逃げたわけじゃない。
 今回参加しないのは今朝からずっと年少組の妹達と遊んで疲れていたからなんだ。
 けして兄の名誉が砕かれるのが怖かったわけじゃないんだ。うん。本当に。

「ふむ、それでは仕方ない。残念ながらわが弟は不参加と……説明に入るとしよう。
 今回遊ぶのはどこかの誰かが十歳以上年下の妹にボロ負けした百人一首ではない。
 そもそも百人一首は歌の暗記で勝負の優位が決まるため年齢差がある場合はふさわしくない
 まあ、歌を覚えて余裕のつもりが相手の方が格上な場合もあるようだが、それはさておき。
 今回私達が遊ぶのは――天使家オリジナルのかるただ!」

 チクチクと言葉のトゲにさらされながら聞くと、
 霙姉さんの説明は次のようなものだった。
 
 1.参加者で好きな言葉を書いて50枚の札を作る
 2.あとは普通のかるたと同じで読み上げられた札をみんなで取りあう。
 
 なるほど。これなら百人一首の覚えている歌の数や
 かるたの『犬も歩けば棒に当たる』等の語彙による戦力差は発生しない。
 どの参加者も得意な札は同じ数、つまり自分の作った札の数になる。
 いかに自分の得意な札を確保し、いかに他の札を奪うかの勝負になるわけだ。

「……というわけだ。だが私を含め三名では少ないな。
 誰か――ちょうどいいところに、春風、氷柱、吹雪」

 リビングの扉を開き、春風さんと氷柱と吹雪が入ってきた。
 正月の晴れ着を着飾った三人の姿を見ると急に部屋が明るくなった気がする。

「かるたをしないか? 丁度人数が欲しかったところだ」
「面白そうですね。春風も参加します」
「短時間であれば問題ありません」
「私パス、札を読むぐらいだったら付き合ってもいいけど」

 快諾した春風さんと吹雪、
 パスをした氷柱も札の読み手をやってくれるらしい。
 本来なら自分がする役割だと思ってたので心の中で氷柱に礼を言う。
 一方、霙姉さんは了解が得られ満足そうに人数を指折り数える。

「よし。これで参加者は、私、春風、立夏、小雨、吹雪の五名とする。
 札作りも一人十枚ずつで丁度いい。札を読むのは氷柱にお願いしよう。
 しかし、もう一つお楽しみが欲しいところだ――」

 その口元が緩む。
 霙姉さんが唐突にこちらを振り返った

「確か先ほど、応援すると言っていたな」

 嫌な予感がする。
 従ってはいけないと心の中で警鐘が鳴る。慌てて首を振り否定する。
 が、次の瞬間には霙姉さんの顔が目前に迫っていた。
 霙姉さんの鋭い瞳がこちらを射抜く。

「全力で応援すると言ったな」
「応援するとは言ったけどそれは意味が違って」
「何でもすると言ったな」
「何でもするとはいってな……」
「言・っ・た・な?」
「…………はい」

 完全に押し切られた形で頷くと霙姉さんは満足そうに笑った。

「よし、それでは今回のかるた大会の優勝商品は――
 ――我らが弟になんでも一つ言うことを聞かせる権利だ!」

「きゅん!?」
「ヤッター☆」
「え……お兄ちゃんに!?」
「……」
「何よそれ聞いてないわ!」

 そして天使家かるた大会の熱気は急激に高まった。
 参加者五名は皆熱心な顔で黙々と自分の札を作り始めている。

「どうしてこんなことに……」
「本当に下僕はバカね。いい気味よ」

 肩を落としていると氷柱の罵倒のセリフが飛んできた。
 聞き慣れた氷柱の罵倒が疲れた今の心にはなぜか心地よい。

「氷柱はどうしたの?」
「札ができるまでは読み手に仕事はないでしょ」

 そんなこともわからないの?と言いたげな表情で氷柱が隣に座った。
 正座する氷柱は晴れ着姿だ。萌黄色の布地に青黄の格子模様の帯、
 見慣れたこの部屋に色の花が咲いたかのような華やかさがある。
 あざやかな色彩の中ですっと伸びた氷柱の白い首元、見慣れたツインテールの脇で、
 綺麗に編み込まれた髪が一房揺れた。
 
「氷柱、その髪……」
「コレ? 蛍姉様に髪を整えてもらったら、こんな風にされちゃったの。
 私はいいって言ったのに『女の子はおめかしする日です!』って断れなかったのよ。
 あ、どうせらしくないって言うんでしょ。いいわよ、私だってわかってるんだから、
 私みたいな子には女の子らしい編み込みとかあまり似合ってないことぐらいわかってるわよ」
「そ、の……似合ってると思う」
「っ!?」
 顔の横で三つ編みをつまんでいた氷柱が言葉に詰まった。
 らしくないと思うが、うっかり言葉が出てしまった。
 普段の氷柱は全体的にシャープな印象を持つが、その象徴である流れるようなツインテールの中に一房の編み込みが増えたことで、ワンポイントの可愛らしさが一際輝いて見えている。そしてその可愛さを一度意識すると、釣り目がちの瞳の奥に見える優しい光、普段は憎まれ口を叩くその唇の艶かさ、普段意識していない箇所までより印象的に見えてきてしまうのだ。

「あ、あ………ま、ま、まあ、素直に受け取っておくわ。
 どんな時でもご主人様を褒めるのは下僕の務めですもの、そうよね。
 わ、わかってるわ。あなたも最近は自分のことがわかってきたみたいね。褒めてあげる」
 氷柱は落ちつかない様子で自分の三つ編みを何度も撫で続けていた。
 こちらも普段言わないセリフを言ったのでなんとなく気恥ずかしい。
 そのまま二人で黙っていると三つ編みをつまんだままの氷柱が口を開いた。 
「…………ね、考えてるの?」
「なんの話?」
「このかるた勝負の優勝者はあなたにお願いできるのよ?
 霙姉様……はわからないけど春風姉様や立夏があなたにどんなお願いをするか考えたこと――ある?」
「――それは」
「まったく考えてないのね。やっぱりバカ、こんなことだったら私だって――」

「札作りが終わったぞ。読み手を頼む」
 氷柱の言葉に重なるように降ってきたのは霙姉さんの言葉。
「は、はい!」氷柱はびくりと震え立ち上がり立夏達の方に向かった。
 その様子を見送っていると不意に誰かと目があった。
 春風さんである。つぶらな瞳がこちらの方をじっと見ていた。
 こちらが見返したのに気づくと春風さんは恥ずかしそうに瞳をそらす。
「オマエもだ。優勝商品にはちゃんと待っていてもらわないとな」
 霙姉さんにうながされ、こちらも席を立った。
 春風さんはこちらのほうをもう見ていないようだ。
「りょーかいです、優勝商品配置につきます。霙姉さんも行きましょう」
 霙姉さんはサイドの黒髪をいじりながら「ふむ」とだけつぶやいた。
 
 こうして始まったかるた大会は大波乱そのものだった。
 第一に霙姉さんはどの札を誰が作るのか決めていなかった。結果、皆が皆好きな札を作った。
 『お』の札などが典型で、お兄ちゃん、オニーチャン、弟、王子様……など被りまくっているのだ。
 文字自体もひらがなでなく漢字や☆も混じっていたりと全てが無茶苦茶である。
 まあ、その無茶苦茶が霙姉さん的には楽しいポイントなのかなとは思う。
 必然的にその試合は、おてつきが連発する荒れたものになったのである。
 
 
 そんな膠着状態を破り、鋭い声が響いた。
「『う』ちゅうのちりはー」
「はい!」
 霙姉さんが読み上げ始めると同時に札を叩いた。
 内容的に霙姉さんが書いた得意札だが、それにしても早い。
 これは勝負の流れが変わる。そう感じさせるインパクトであった。
「すみません」
 皆が唖然とする中、吹雪が手を上げた。
「霙姉の叩いたその場所、先ほどまで札はなかったと記憶しています」
 とことこ歩き霙姉の晴れ着の袖をぐいと引く。
 中からパラパラと札がこぼれて床へと落ちた。
「霙姉は袖に隠し持った札を床に叩きつけ取ったように見せたのです。
 通常のかるたであれば無い札があることに気づきますが、これは自作かるたです。
 競技者も大半の札を知らないことを利用したトリックです」
「イカサマじゃないの、霙姉様」

 霙姉さん イカサマにより失格

 
「『ぶ』ったいがちからがうけると、そのちからのほうこうにかそくどがー」
「ハイっ!」
 今度は立夏がすばやく札を叩く。
「エッヘン!難しいこと言われたら吹雪ちゃんの難しい札をさがせばいいんだモン。
 リカ、アッタマイイ~♪」
 どうやら立夏は札を書いた人間から札の絞込みを始めたようだ。
 こういう感覚的なところが鋭い立夏らしい作戦である。
 おてつきが多い立夏だが、この先は盛り返すかもしれない
「立夏姉、立夏姉」
 吹雪が立夏の手を指先でつつく。
「読まれたのは運動の第二法則です。立夏姉が取ったのは熱力学第二法則、おてつきです」
 立夏の手が開かれるとエントロピーがうんたらかんたらと別の文書が書かれていた。
「ね、熱力学第二法則が憎いチャオー!」

 立夏 おてつきのしすぎにより絶望的


「『ち』ょこれーとぱふぇたべたい☆……このバカリッカ」
「はい」
 一方、順調に札を取っているのが吹雪である。
 なにしろ吹雪の札は科学数学知識全般の内容が書かれた難しい内容だ。
 札を取る人間はぱっと見た状態で札を意味合い的に理解することが難しい。
 札を見つけてから言ってる内容と合っているか考えねばならないのだ。
 だがタイムラグの間に、書いた当人である吹雪は自分の札を余裕で確保できる。
 そのため吹雪は安心して他の人間の札を取ることに専念できるのである。
 本気の作戦すぎてある意味大人げないが、事実吹雪は子供だ。
 吹雪の言動を思えば無意識に作った札が結果的にこうなった可能性もある。
「ふぅ」
 吹雪が手元に取った札を引き寄せた。
 その動きは弱弱しく、頬も上気してほのかに赤い。
 小さな吹雪は全身を投げ出し札を取っていたことを思い出す。
「氷柱……」
 読み手兼審判の氷柱に声をかけると
 氷柱の方も気づいていたようで黙って頷いた。
 吹雪は棄権するのをぎりぎりまで粘ったが、
 最終的には受け入れ隣室で休憩することになった。

 吹雪 めまいによりドクターストップ

 
 そして終盤戦、
 残ったのは小雨と春風さんの二人である。

 予想外にも善戦しているのは小雨だった。
 もともとの生真面目な性格がかるたという種目とかみ合ったのだろうか、
 合っている札を探して取る。この一点のみに集中した小雨は確実に札を確保していた。
「小雨がんばります、小雨がんばります」とつぶやきながら必死に札を探すので、
 頑張らせてしまった本人としては小雨に勝ってほしいと思うぐらいだ。

 一方、春風さんの方には迷いがあるようだ。
 本来ならリーチ、スタミナが上である春風さんが有利なのだが、
 必死な様子の小雨に姉として譲ろうとしているのか、時々札を取ろうとしない時がある。
 だが差がつけられない程度には札を取るので、勝つかどうか悩んでいる状態のように見える。
 小雨は札を取ることだけに集中しているため春風さんの様子には気づいていないようだった。 
 

 こうして残った最後の一枚。
 小雨と春風さんのここまで取った札の数は同数。
 こうなっては札の内容も何もない。読まれると同時に札を取るスピード勝負だ。
 最後の札に集中し、小雨が体をぐっと前傾させる。 
 春風さんも身を乗り出そうとして、その指先が宙をさまよう。
 やがて意を決めた手指はぎゅっと握られ、春風さんは重心を後ろに戻した。
 春風さんが諦め、勝負は決まったかのように思われた。
 
「え、これ私が読むの? ……もう、しょうがないわね」
 そして氷柱の躊躇する声と共に、最後の札が読まれた。

「『お』うじさま――」
 
 小雨が飛び出すその瞬間、絶叫が響いた。
「やっぱりだめえええええええ!」
 体を丸ごと投げ出す春風さん。
 小雨ともつれ合うように春風さんの影が転がった。
 衝撃で二人の取り札があたりに散らばる。
「春風、小雨!」「小雨ちゃん!」
 慌てて飛び出した皆が見たものは、
 散らばった札の上で寝転がる二人の少女。
 うつぶせの状態で目を回した小雨の姿と、
 小雨と共に倒れながらも笑顔を浮かべた春風さんの姿だった。
「おうじさま……」
 その手には『お』の札がしっかりと握られていた。

「ごめんなさい小雨ちゃん!春風、夢中になっちゃって……ケガしなかった?」
 起き上がった春風さんは小雨を抱き起こすと開口一番にそう言った。
 春風さんの表情からは妹を押しのけた罪悪感が今にもあふれ出しそうだった。
「だ、大丈夫です」
「ごめんなさい。可愛い妹にこんなにムキになる春風は悪いお姉ちゃんです……」
 瞳をうるませる春風さんに小雨は三つ編みを揺らして否定した。
「い、いいえ、違います春風お姉ちゃん。
 小雨……こんなに頑張れたのはじめてで、すごく嬉しいです。
 それは春風お姉ちゃんが小雨の相手をしてくれたから、
 だから……今までも、これからも、ずっと、
 春風お姉ちゃんは小雨の素敵なお姉ちゃんです……」
「小雨ちゃん……ありがとう」
 その言葉に感極まった春風さんが小雨を強く抱きしめる。
 一瞬驚いた顔を見せた小雨だが春風さんのなすがままに任せていた。 
 二人の会話が一区切りついたところで自分も小雨に歩み寄る。
「あ、お兄ちゃん……」
「小雨、良くがんばったね」
 頭を撫でてあげると小雨は気持ちよさそうに目を細めた。
 その細めた瞳が潤み、一筋の涙が流れた。
「えへ、お、おかしいですよね、お兄ちゃん。
 小雨は一番になったわけじゃないのに、
 願い事――かなっちゃいました――」


 小雨と春風さんが落ち着いたのを見計らい、霙姉さんが口を開く。
「色々あったが、ルールはルールだ。春風はこいつに何をお願いする?」
 小雨を離した春風さんがこちらにおずおずと歩み寄る。
「王子様。春風、お願いがあります」
 ついにこの時が来た。
 春風さんは何をお願いするのだろうか、
 春風さんは愛情表現が少し……いや激しすぎるぐらい情熱のある人だ。
 誰が好きか春風さんが好きか聞かれるだけならまだいい。
 普段のスキンシップや言動を思えば立夏の要求するハグやキス、
 もしかしたらそれ以上……いや、そんなことを考えてはいけない。
 慌てて頭から振り払う。
 空白になった頭に氷柱の問いが甦った
『春風姉様がどんなお願いをするか、考えたこと――ある?』
 すまん氷柱。一生懸命考えてみたけどわからなかった。
 判決を待つ被告のような気持ちで春風さんの言葉を待つ。
「王子様――」
 唾を飲む。
「――この晴れ着姿と髪型、春風に似合ってますか? 正直に答えて下さい」
 放たれた言葉は完全に予想外のものだった。
 思わず春風さんのことをまじまじと見てしまう。
 
 柔らかな栗色の髪とつぶらな瞳、誰かをいつくしむ優しげな表情。
 だがその一方では内側に愛情の灯火を煌々と輝かせるそんな女性。
 その色彩を取り出したような赤い着物は春風さんによく似合っていた。
 ただ、先ほどの札争奪戦で体ごと飛び込んでしまったせいだろうか、
 着物の襟が乱れ、白くなだらかな鎖骨のラインと、その下……
 ふくよかな曲線までがのぞきそうになってしまっている。
 こちらの視線に気づいた春風さんが慌てて胸元を直す。
 その仕草までが色っぽくてドキドキしてしまう。
 何を言えばいいのかわからなくなりそうだ。
「似合ってます春風さん!可愛いです!」
 灼熱する脳髄を堪えてそれだけ告げる。
 間髪入れず聞こえてきたのは春風さんの声。
「嬉しいです。それだけで春風、
 きゅううううううううううううううん♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥」
 大音量のきゅんが途切れると春風さんは動かなくなった。
「……最後の札に全身全霊を振り絞っていたようだし、今の言葉がトドメか」
 霙姉さんの言葉も春風さんには届いていない。
 春風さんは失神していた。

「よいしょっと」 
 気を失ったままの春風さんの背中と足に手を回して一息に持ち上げる。
 俗に言うお姫様抱っこという運び方だ。
 眠った人の体は一層重く感じられるが短い間ならどうにか持ちそうである。
「春風おねーちゃんばっかり、ズルーイ!リカもしてほしいー!」
「優勝者の役得とでも思って諦めろ」
 不満の声を上げる立夏をあしらって霙姉さんはリビングのドアを開けてくれた。
「春風の部屋のベッドに寝かせておけばいい。服は後で私達が着替えさせるからな」 
「ねぇ、霙姉さん」
「どうした、オマエが着替えさせたいか」
「ち、がーいます!」
 霙姉さんに歯を剥いて反論してから言葉を続ける。
「春風さんは……あんなに苦労したのにこんな願いごとでよかったのかな、って」
「ふむ、春風がそういうならそれが春風の願い事だ。オマエはそれをかなえてやればいい」
「うん、それはわかってるけど」
「すぐにとはいえないがいずれ理解してやれ。
 確かに春風の行動はとんでもなく情熱的でオマエが戸惑ってしまうのも良くわかる。
 だがその法外な情熱と同じだけ、もしかしたらそれ以上――」
 言葉を切ると
「春風は――乙女なんだよ」
 霙姉さんはバタンと扉を閉じた。

「よし、もうすこしだ」
 春風さんを抱えたまま階段を上る。
 中々の長丁場だったがもうすぐ終わりが見えてきた。
 ヒカルと春風さんの部屋の扉を足で開き春風さんを運び込む。
 部屋の中は飾り気の無いヒカルの家具と女の子らしい春風さんの家具で
 綺麗に分かれているためどちらに運ぶかを間違えることはない
「これで、終わり、っと」
 最後の力を振り絞りベッドの上にそっと春風さんを寝かせる。
 寝かせる際に浮いた髪から女の子の良い香りがした。
 一瞬ドキリとするが春風さんはまだ起きる様子がない。
「どうして春風さんはあんなこと聞いたんだろうな。
 心配しなくても氷柱に負けないぐらい似合ってますよ」 
 寝ている今だから安心して言えることを好き勝手につぶやいてみる。
 すると唐突に心の奥にひっかかるものがあった。
 氷柱の晴れ着を褒めていた時の――春風さんの視線。
「……だから、か。霙姉さんに怒られるわけだよ」
 こっちだって普通に聞かれれば答えるのに、
 その一言のためにこの人はどれだけの気持ちを注いだのだろう。
 この小さな体にはどれだけのエネルギーが詰まっているのだろう。
 呼吸と共に上下する胸元にだけは目をやらないようにして春風さんを見つめた。
 するとその手に何かが握られているのに気がついた。
 失神しても握り続けていた最後のかるたの札。
 札を引くと春風さんの手からするりと抜けた。
「たしか王子様がなんとか――」
 札をくるりと裏返す。

『お』うじさま ことしも よろしくおねがいします

 いつの間にか自分が笑顔になっているのを感じた。
 なんて素敵な家族に囲まれているのだろう、心からそう思う。
 眠ったままの春風さんに毛布をかけ、起こさないように部屋を静かに出ることにする。
 部屋の扉を閉じると同時にそっと一言。

「こちらこそよろしくお願いします――春風さん」





と、どうでしょうか。長くて疲れてしまったらごめんなさい。
今回は家族全体でわいわいした感じを出してみた感じです。

本来は春風さん話なのですが、
全員にそれぞれ見せ場を用意してたら、実質的には霙氷柱小雨もかなり重要ポジになりました。
量も跳ね上がりました。あんまり見直ししてませんが楽しんでいただければ幸いです。
なんか今回の一件を元に小雨がかるた取りにはまるちはやふる的な何かが頭に浮かんだりなんとか

私の今年の抱負ですがオリジナルの小説を書く目標を立てています。
そのため今後べびプリのSSは減ります。

突然指慣らしや気分転換で書いたり、面白そうな話があれば可能な範囲で乗ったりするので、
今までどおり付き合っていただければ幸いです。

まあ正月に、
「あけましておめでとうございます」
「ことしもよろしくおねがいいたします」
のオチSSを並べたのも綺麗だということで


今年のご挨拶かつ一応の区切りとさせてください。
これからからもよろしくお願いいたします。

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プロフィール

Author:akio(あきお)
とってもゆるい人間が気まぐれに記事を書いたり、書かなかったりします。見てくれる方はあまりいないでしょうが、見て頂けるのでしたらありがたい限りです。
小説っぽいものを出したり、出さなかったりするサークル「妄想ワンコインスタンド」のほったて窓口。メールは aki44013あっとまーくgmail.com まで。twitterはdm_akioまで

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