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貴方につながるハートのかたち

べびプリのアニメ化おめでとうございます!
珈琲みるく症候群の梅入さんの19Angelsのアニメ化記念べびプリ合同本2に出したSSです。

この日記を下地に体当たりしてみたお話です。



(始)

「お兄ちゃん……」
 ユキは誰もいないお家でつぶやきます。
 ユキの手の中にあるのはハート型のチョコレート。
 お兄ちゃんにプレゼントしようと思っていた大切な大切なチョコレート。
 でもお兄ちゃんは――ここにはいません。
 ユキのお兄ちゃんは、本当に優しくてかっこよくて素敵なお兄ちゃんだから――
 きっといろんな女の子にチョコレートをもらったりデートに誘われたりするんだと思います。

 ユキは手の中のチョコレートを握ります。
 帰る途中に少しとけて歪んじゃった小さな銀紙の包み。
 手の中に小さなハートの形があるのを何度も確かめます。

 ぎゅっと握るとハートがもっと歪んじゃうのに――

 お兄ちゃんが居ないこの部屋で、
 お兄ちゃんがユキの知らない女の子といるのを考えていると、
 ユキの手の中からハートが無くなっちゃったんじゃないかって、
 何度繰り返しても心配で、チョコを触るのを止められません。

 ユキは手を握ります。
 
 ユキ――早く、大人になりたい――
 早く元気になって早く早く大人になって――

 ユキはぎゅっと手を握ります。

 世界で1番大好きなお兄ちゃんとずっと一緒にいたいのに――
 そのお願い以外もうユキはなんにもいらないのに――

 ユキはぎゅっとハートを握りしめます。

 お兄ちゃん――――


 玄関から聞こえる物音に目が覚めます。
 あのままユキはソファーで眠ってしまったみたいです。
 手の中には小さな塊がありました。ユキのチョコレート。
 どうなっているか怖くて手を開くことができません。
「ただいまー!」
 お兄ちゃんの声が聞こえました。 
 その時、ユキは駆け出していました。誰よりも早くお兄ちゃんに会いたい。
 それだけを考えていました。
「お兄ちゃん、おかえりなさい!」
「ただいま、ユキ。どうしたのそんなに慌てて、
 お迎えに来てくれるのはうれしいけどあまり無理しちゃだめだよ?」
「はい。わかりました。お兄ちゃん」
 いつものように優しいお兄ちゃん。ユキのことを気遣ってくれるお兄ちゃん。
 ユキは思わず笑顔になります。
「よっこらせっと」
 お兄ちゃんが学校のカバンを降ろします。
 その時、お兄ちゃんのカバンから何かが落ちました。
 ピンクの包み紙と花飾りでラッピングされた箱――バレンタインデーのチョコレートです。
「あ、これ?うちは女の子多いから義理だけどいくつかもらえたんだよ」
 チョコレート――思わずユキは右手を背中に隠してしまいました。
 ユキのチョコレート、握って歪んじゃったユキのチョコレート。
 怖くて見れないままだけど、きっとぐちゃぐちゃになってます。
 お兄ちゃんだってきっと、ユキの汚いチョコレートより――
 大人の女の人がくれた――綺麗にラッピングされたチョコレートの方が――
「ぇ――」
 ユキの瞳が熱くなりました。
 涙がほっぺを伝ってこぼれました。
 病院で一人でいた時のさびしい気持ちとは違いました。
 学校をお休みする時のくやしい気持ちとも違いました。
 涙とおなじぐらい熱いものがユキの胸の奥であふれて止まりません。
 お兄ちゃんが心配しちゃうのに、笑顔でいないとお兄ちゃんに嫌われちゃうのに、
 どうしても止めることができません。
「ユキ……?」
 お兄ちゃんはユキの頭をなでてくれました。
 あんなに大好きだったお兄ちゃんの優しい手なのに、
 今のユキには頭をなでられたことがなぜか悲しくて仕方ありません。
 あまりにも悲しくて悲しくて、きっとユキはこわれちゃったんだと思いました。
 もうお兄ちゃんと一緒にいられない。もっとたくさんの涙がユキの瞳からこぼれました。
「ユキ」
 ユキの体をお兄ちゃんはぎゅっと抱きしめてくれました。
 触れるお兄ちゃんの胸から、とくん、とくん、お兄ちゃんの音が聞こえます。
 お兄ちゃんの音が、とくん、とくん、ユキの側にいてくれることがわかります。
 すると、とくとくとくとくと響いていたユキの音もお兄ちゃんと一緒にとくん、とくん。
 ユキの涙もいつのまにか止まっていました。お兄ちゃんは魔法使いみたい……そうユキは思いました。
「ユキ」
「おにいちゃん……」
「右手をあけてごらん?」
「……」
 そこにはユキみたいに汚いチョコレートがあります。
 お兄ちゃんでも絶対見せたくないとユキは思いました。
 でもお兄ちゃんの音があまりに優しくとくんと響くから、
 右手の指は自然と外側に開き始めていました。
 チョコで汚れた茶色の指が開き終わると、
 汗に濡れた手のひらの上にユキのチョコレートがありました。
 ハート――じゃなくて普通と同じ丸いチョコレート。
 握りすぎたハートのチョコレートがとけて丸くなっていました。
 その汚れたチョコレートを見ているとユキはまた涙が出そうになります。
「お兄ちゃん――見ないで――」
 だけどお兄ちゃんはユキの手のひらからチョコレートをつまみあげて、
「ありがとう嬉しいよ」
 ユキの汚いチョコレートをお兄ちゃんは一口で食べてくれました。
「おいしかったよ、ユキ」
 お兄ちゃんのその優しい笑顔を見た瞬間、ユキはまた泣いてしまいました。
 何度止めようとしても涙を止められません。でもこれはさっきまでの涙とは違います。
 きっとユキはうれしくて泣いていたんだと思います――


「ちょっと出かけてくるよ」
「行ってらっしゃい。お兄ちゃん」
 日曜日、遊びに出かけるお兄ちゃんをユキはいつものように見送りました。
 日曜の朝早くはちびちゃん達も寝ていてリビングはとても静かです。
 一人でソファーに座ってユキはお兄ちゃんのことを考えます。
「お兄ちゃん……今頃どうしてるかな」
 静かなリビングはバレンタインデーの時と少し似ています。

 胸に手を当てて軽く右手を握ります。
 お兄ちゃんはとってもかっこよくて優しくてすてきだから――
 お友達も女の子もきっとお兄ちゃんのことを好きになると思います――
 だけどユキはあの時ほどさびしくありません。
 ユキの子供なハートでもお兄ちゃんは受け取ってくれたから、
 ユキの壊れたハートをお兄ちゃんが綺麗に治してくれたから、

 ユキは胸の前で右手をぎゅっと握ります。
 きっとこの中にはユキのハートがまだあるんだと思います。
 あの時はユキがダメにしちゃったけどお兄ちゃんが治してくれたハートが――

 ユキ――

 早く、大人になりたい。

 早く元気になって早く大人になって――
 世界で1番大好きなお兄ちゃんに――

 大人になったユキのハートをちゃんと今度は届けたい――
 そして大好きなお兄ちゃんとずっとずっと一緒にいたい――

 それがユキのこの世で1番の願いです。

 (終)
 
【合同誌コメント】
べびプリ最高!アニメ化おめでとうございます!
今回のバレンタインデーは仕事で残念ながら日記更新を監視できず残念でしたというわけで日記コメント代わりではありますが、全力全開で今回の日記に体当たりするようなSSを書いてみました。若干やりすぎて今後日記でフォローが入ると原作乖離が発生しそうですがまあいいか!と思いのたけは全力でぶつけなくちゃつまらない!というわけでこれからも全力全開でべびプリを愛する所存であります。

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プロフィール

Author:akio(あきお)
とってもゆるい人間が気まぐれに記事を書いたり、書かなかったりします。見てくれる方はあまりいないでしょうが、見て頂けるのでしたらありがたい限りです。
小説っぽいものを出したり、出さなかったりするサークル「妄想ワンコインスタンド」のほったて窓口。メールは aki44013あっとまーくgmail.com まで。twitterはdm_akioまで

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