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胸の温度の伝導体

販促SS、綿雪とちょろっと話すだけ。
小説3巻の設定を一部だけ使用。

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(始)

 早朝、コーヒーを飲もうとキッチンに入ると
 スリッパの音がやがて遠くから微かに響き始める。
 パタパタと静かな足音が近づき、扉が開く。
 その音を待って、いつものように朝の挨拶。

「おはよう、ユキ」
「おはようございます、お兄ちゃん。すぐにコーヒー入れますね」

 キッチンの椅子に座り、
 綿雪が楽しそうにコーヒーをいれる様子を眺める。
 あのスウェーデン鉄道のマグカップを買ってから
 綿雪はよくコーヒーを入れてくれるようになっていた。
「ユキがお兄ちゃんのために選んだマグカップですから……ユキが入れたいんです♥」
 というのは綿雪の言。
 だけど大家族である我が家の朝食はいつも大戦争、
 ゆっくりお茶を楽しむ余裕は無い。
 いつも早めに寝かされる綿雪がその分早起きということもあり、
 ヒカルが早朝のトレーニングに出てから皆が起き出してくるまで、
 このわずかな時間を使って綿雪とお茶をするのが常となっていた。
 
 綿雪からマグカップを受け取り口をつけると、
 鼻先をそっとくすぐるコーヒーの香り。
 少しの砂糖と少しのミルク、
 甘さと苦さが優しく混じりあう。
 自分好みの味が口の中を広がること、
 綿雪がそれを覚えていてくれること、
 コーヒーを飲み下す度に胸の奥がほんのりと暖かくなるのを感じる。

「あったまるなぁ……」
「ふふふ」

 マグカップを片手にほっと一息つくと、
 綿雪がこちらの顔をじっと眺めていた。
 その顔はとても嬉しそうに見える。

「どうしたの?」
「うれしいです。お兄ちゃんがコーヒーを飲んで喜んでくれるのが……」
「そりゃユキが煎れてくれるんだから喜ぶさ」
「はい。でも、ユキにはとってもうれしいことなんです」

 綿雪は少しだけ寂しそうな顔をして
「ユキは昔一人の時、夜中に突然起きることがありました。
 そんな時はとても寂しくて、ユキのまんなかが氷みたいにつめたくて、
 体もふるえそうになって、弱いユキはいつも泣いちゃいそうになります。
 そんな時にはいつもお姉ちゃん達が暖かい飲み物をいれてくれました――」

 何となく手元のマグカップに目を落とす。
 コーヒーとミルクの混ざりあったこげ茶色、
 その色合いを見つめながら綿雪の言葉を待つ。

「――もちろん、夜ですからコーヒーじゃありません。
 あったかいホットミルク。でも不思議ですねお兄ちゃん。
 ユキの体があったかくなるとユキの心もあったかくなります。
 まるでお姉ちゃん達のあったかい心をもらったみたいです。
 体もぽかぽかして、あんなにつめたかった布団もあったかくて、
 そのまま朝までぐっすり!だからユキもいつか大好きな人を――
 お兄ちゃんをあっためられるようになりたいって、体も心も――
 だからユキは本当に本当に嬉しくて――お兄ちゃん?」

 椅子から立ち上がり、
 残りのコーヒーを一気に飲み干す。
 こげ茶色の中に重ねた同情も全部飲み込んで、
 そして綿雪に告げる。

「ユキは何を飲みたい?」

 突然の言葉に綿雪は驚いたようだ。
「えっ、お兄ちゃん?でも今はユキが……」
 ユキの返答を聞かずにキッチンの奥へ向かうと、
 流しに自分のマグカップを置く。
 マグカップに描かれたのは、デフォルメされた水色のスウェーデン鉄道、
 どんな冷たい大地も越えて物を遠くへ運んでいく。
 今、自分にも大事な何かを届けてくれた。

 少し離れたところで迷ったような綿雪の気配。
「俺だってユキのことをあっためてあげたいんだよ」
 そう告げながら綿雪用のマグカップを棚から下ろす。
 冷蔵庫から牛乳を出してお鍋の仕度をする。
 答えなんかもうわかってる。

「あったかいホットミルク――♥」
 スウェーデン鉄道のマグカップを指でなぞって、静かに祈る。
 この胸の暖かさも綿雪へ届きますように、と――

(終)
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綿雪かわいい!
マグカップ買うよ!
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akio(あきお)

Author:akio(あきお)
とってもゆるい人間が気まぐれに記事を書いたり、書かなかったりします。見てくれる方はあまりいないでしょうが、見て頂けるのでしたらありがたい限りです。
小説っぽいものを出したり、出さなかったりするサークル「妄想ワンコインスタンド」のほったて窓口。メールは aki44013あっとまーくgmail.com まで。twitterはdm_akioまで

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